文化系ブログ

アート、小説、音楽、映画、文化に関すること全般を雑談的に。

104歳で亡くなったまど・みちおさんは、本当は凄い詩人だった。

まど・みちお全詩集

 

詩人のまど・みちおさんがなくなった。104歳。天寿を全うした、と言っていいのだろう。

生まれたのは1909年。詩人として認められたのは昭和9年、雑誌『コドモノクニ』に応募した作品が北原白秋によって特選に選ばれたことだったという。

 

誰でも知っている代表作は童謡『ぞうさん』だろう。

 

ぞうさん ぞうさん おはながながいのね

そうよ かあさんも ながいのよ

 

ぞうさん ぞうさん だれがすきなの

あのね かあさんが すきなのよ

 

のんびりしたメロディと平易な歌詞。子どもの頃は何を当たり前のことを言っているのだろうと思っていたが、谷川俊太郎は彼の詩を『こんなにやさしい言葉で、こんなに少ない言葉で、こんなに深いことを書く詩人は、世界で、まどさんただ一人だ」と言っているのだと言う。

 

この「ぞうさん」について、まど・みちお本人の言葉として、「ほかの動物と違っていても、自分が自分であることはすばらしいと象はかねがね思っている」と語っていたのだそうだ。これはちょっと、はっと胸を突かれた。

 

自分が自分に生まれたことはすばらしい。彼の詩にはこのテーマが多いのだそうだ。

 

ぞうさん、あなたの鼻は長いんだね。そうだよ。かあさんも長いんだよ。そして僕は母さんが好きなんだ。

 

つまりこの言葉は、「僕は僕が好きなんだ!」と言っていることになるのだ、ということがようやく分かった。

 

この自己肯定の大事さは、現在異常に低いと言われている日本人の子どもの自己肯定感に、何か一石を投じるものなのではないかと思う。

 

このうたの意味を、子どもの頃から、もっと伝えてあげて、理解させてあげたらいいのではないだろうか。

 

今までこの詩人をどう評価したらいいのか、よくわからなかったのだけど、とても大事なことをとても簡単な言葉で言っている、この詩人は本当に凄いと思った。谷川俊太郎もまたやはり凄い。