文化系ブログ

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羽生結弦選手の金メダルへの道

KISS & CRY~氷上の美しき勇者たち 2014WINTER ~日本男子フィギュアスケート ソチ冬季オリンピックをTVで応援! BOOK (TOKYO NEWS MOOK 403号)

 

昨日テレビを見ていたら、ソチ・オリンピックの男子フィギュアで金メダルを獲得した羽生結弦選手のドキュメンタリをやっていた。

 

それを見ていていろいろ思うことがあったので、このブログにも書いておきたい。

 

昨日初めて知ったのは、『4回転サルコー』というジャンプがどういうものなのかということ。トーループが爪先で蹴ってジャンプして回転するのに対し、サルコーは脚を振り上げる勢いでジャンプして回転すると言うより高度なワザで、これを組み込むことによって演技構成に幅が出て、得点が1.1倍になる後半に点の高い連続ジャンプを銀メダルのチャンより一つ多く組み込めるようになったことが勝因だ、というのは見ていたときの感じたことと一致していた。

 

つまり、前半上手く行かなくても後半取り戻せる構成になっていたということだ。だから羽生は最後まで手を抜かず、全力で滑っている印象があったが、チャンは途中でミスしてから何となく意気消沈して、演技一つ一つが力が抜けた感じになってしまったんだなと思う。

 

コーチのブライアン・オーサー氏は前回キム・ヨナの指導をした人だと言うが、前回のキム・ヨナの演技構成は浅田真央よりずっとよかったと思っていたので、羽生はコーチ選びに大成功したと言うこともあると思う。しかしそれももちろん羽生の才能と努力が引き寄せたものだったのだろう。

 

ずっとソチの金メダルの写真を持っていて、迷いが生じたときにそれを見ていたのだそうだ。自分が何のために努力しているのか、それでその迷いが吹っ切れたのだと思う。

 

彼の練習ノートには、練習のときに飛んだ一つ一つのジャンプについて全部記録してあるのだそうだ。だから、どういう意識で飛んだら上手く行ったとか、どういうことは気をつけてもだめだったとか、全部振り返ることができるのだという。

 

本当に頭が良い人だと思うとともに、それだけソチに賭ける執念のようなものも感じたし、細面で優しい顔立ちとは裏腹の、殺気のようなものさえ感じる部分もあった。こんな風に取り組める人こそ、つまりは天才なのだと思ったし、自ら運を引き寄せる力を持っているのだと思った。

 

フィギュアという競技は、スポーツの中で最もアートに近い競技だと思う。羽生のように容姿にも恵まれ、性格も明るく真摯で、才能も努力も人一倍の人間を見ると、本当にすばらしいなあと思う。

 

今はまだ若さと勢いが武器だけれども、この時点で花を開かせる、「時分の花」が大輪であることが、「まことの花」にもつながるだろう。彼が尊敬するプルシェンコ選手のように、世界に大きな影響を与える選手になってもらいたいと思う。